更年期障害とは
40歳代以降の男女の性ホルモン分泌量の低下が原因となる自律神経失調症に似た症候群。
男女ともに40歳を過ぎた頃から見られる、様々な体調の不良や情緒不安定などの症状をまとめて更年期障害と呼びます。
女性の場合は、閉経期前後の約10年間に卵巣ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少することによって症状が現れます。
症状としては自律神経失調症と同様の症状が現れます。
女性の閉経前における身体的症状としては、のぼせや顔の火照り、脈が速くなる、動悸や息切れ、異常な発汗、血圧が上下する、耳鳴り、頭痛やめまいなどです。精神的な症状としては、興奮亢進、イライラや不安感、うつ、不眠などです。
閉経後はこれらに加えて、膀胱炎や尿失禁、腰や膝の関節痛、目やのどなどの粘膜の異常などの身体的症状と無気力感などが精神的症状として現れてきます。女性は生理不順も症状としてみられます。
治療には、ホルモン剤などの薬物治療や漢方療法、予防的な意味合いの食事療法などがあります。
初期症状が、だるい、寝付けないなどの曖昧なものであるため、発症に気付かずに、身体が意のままにならない自分への不満がストレスとなって精神的症状を悪化させるケースが多いです。まずは更年期になる前に症状についての正しい知識と対処方法を事前準備しておくことが大切です。
更年期障害と血液検査(女性ホルモンのバランスチェック)
更年期を意識し始めた頃に自身のホルモン量を把握しておくことは大切です。
更年期と思っていたら実は違う病気だった。更年期に差し掛かると多種多様な症状に悩まされる方も少なくありません。しかし、「更年期だから…」と自己判断するのはとても危険です。次にあげる更年期症状に似た様々な病気を知っておきましょう。
更年期によく見逃されがちな疾患として、バセドー病や橋本病などの「甲状腺ホルモン異常」、脳下垂体の病気、リュウマチ等を含めた「膠原病」等、更年期でみられる症状と良く似ているものがあります。
「生理は来ているが更年期症状がある。」
「まだ閉経の年齢ではないのに生理が来ない。」
こんな時には血液検査で簡単に女性ホルモンの量を測ることが可能です。
*当院では初診と治療を開始して三ヶ月後、半年後と血液検査をしております。
また、更年期障害を疑ったホルモン量検査以外にも、次のような病気も血液検査をしておくことが重要となります。
更年様症状の背景にあり得る器質的疾患
- 甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能低下症
- 脳下垂体異常
- 褐色細胞腫
- 強皮症
- シェーグレン症候群
- 副腎皮質機能低下症
- 慢性関節リウマチ
- 貧血
- 白血病 など
「最近どうも体調がすぐれないな…でも更年期だから仕方がないか…」と自己判断で放置せずに、一度受診をしてください。
普段の不調が更年期からくるものなのか、それ以外の病気が隠れているのか、はっきりさせることが大切です。
更年期と骨密度測定(骨粗しょう症)
更年期に入るとエストロゲンが減少し、骨形成や代謝異常が引き起こされる為、骨量が急激に減少する傾向にあります。
骨粗しょう症は自覚症状がなく進行するため自分の骨の状態を知っておくことが大切です。当院では超音波を使った骨量測定装置を使用するため短時間での測定結果が得られます。また、X線を使用しない測定方法のため、妊産婦や若年者の検査にも適しています。
骨粗しょう症予防の為の運動を行う場合にも、骨密度の定期的な測定が重要です。
更年期障害と漢方薬
更年期障害では心身両面にわたり様々な症状がでてきます。
特に血管運動神経障害(ほてり・のぼせ・異常発汗・動悸・高血圧・低血圧・手足の冷え等)や精神神経障害(頭痛・めまい・立ちくらみ・不眠・耳鳴り・不安感・イライラ・気力減退・抑うつ・記憶力低下等)が多くみられる症状です。検査で異常はみつからないけれども、いろいろな自覚症状が現れる「不定愁訴」は漢方の得意分野でもあります。
イライラや不安、不眠、気分がふさぐといった精神症状には「カミショウヨウサン」。
頭痛、めまい、肩こりがあり、のぼせやすく、時に下腹部に痛みがある人には「ケイシブクリョウガン」。
疲れやすく貧血気味で冷えなどもある場合は「トウキシャクヤクサン」など、他にも様々な選択肢や組み合わせはありますが、個人の体質や体力、症状に合わせて使い分けていきます。
更年期障害とプラセンタ療法(メルスモン)
更年期障害に有効なプラセンタ療法をご存知ですか?
更年期障害・乳汁分泌不全・慢性肝疾患による肝機能障害に保険適用されています。
更年期障害には自然治癒力を高めるプラセンタ
プラセンタの最大の特徴として「自然治癒力」の増大があります。
体の不調を慢性化させない自然薬として注目を集めています。また、更年期障害と肝炎に対する保険適用が厚生労働省から許可されている医薬品です。
更年期障害におけるプラセンタ療法はプラセンタの皮下注射になります。更年期障害の緩和にはプラセンタの持つ、ホルモンを調整する「内分泌調整作用」や自律神経のバランスを調整する「自律神経調整作用」等が有効と考えられています。また、プラセンタ注射に加え、症状に応じた漢方薬治療を併用することもあります。
プラセンタの薬理作用
プラセンタの薬理効果に対する研究は数多く成されており、幾つもの有効な作用が確認されてきています。
- 自律神経調整作用
- 基礎代謝向上作用
- 免疫賦活作用
- 抗疲労作用
- 抗アレルギー作用
- 血行促進作用
- 内分泌調整作用
- 強肝作用
- 乳汁分泌促進作用
- 肉芽形成促進作用
- 活性酸素除去作用
- 抗炎症作用
- 抗貧血作用
- 体質改善作用
- 抗突然変異作用
患者さんの皆様へ
「メルスモン」の簡単な説明をしたいと思います。
メルスモンは、更年期障害と乳汁分泌不全に有効な薬剤として、厚生労働省より承認されています。
更年期障害は閉経によって女性ホルモンが急に変化することで発症します。
出産を終えた時も同様に、女性ホルモンが急に変化します。
これは出産によって女性ホルモンを分泌していた胎盤を出産時に失うためによるものです。これにより、出産後に更年期障害に似た症状が現れたり、母乳の出が悪くなったりすることがあります。胎盤を原料に作られたメルスモンを使用することで、失われた、もしくは機能が衰えた胎盤の働きを補い、更年期や産後に特有な症状を改善することが期待されます。
メルスモンは女性の胎盤を原料に作られたプラセンタ製剤です。
その為、化学合成された他のお薬とは異なり化学物質はほとんど含まれない安全なお薬です。
メルスモンの原料となる胎盤は感染症等の病気がない事を国内の病院で検査した健康な女性から提供して頂いた安全なものです。献血で提供される血液は輸血に使われるだけでなく、血液を原料に作られる薬剤の材料としても使われます。これは人間が人間を助けようという考え方で、プラセンタ製剤も同様の考え方で作られています。血液を原料にして作られた薬剤のように、人由来の成分を原料とするお薬を使った人は安全性に対して十分に考慮するため、厚生労働省により献血をしてはいけないことになっています。
メルスモンも人由来の胎盤から作られている為、メルスモンのプラセンタ注射を受けた方の献血は認められていません。メルスモンは使われ始めて50年以上も経つ長い歴史のある薬剤です。半世紀以上もの長い間使われてきていますが、重い副作用はこれまでに報告されていません。メルスモンは女性から提供された女性の為の優しいお薬です。
※メルスモンのプラセンタ注射を使った更年期障害の治療を行う際は、厚生労働省令に基づき規定の同意書にご署名を頂く必要があります。
更年期と同時に生活習慣病にも気をつけましょう
更年期というとどこか暗く寂しいイメージを持ってしまいがちですが、自然な身体の営みの結果として誰もが経験する「時期」だと考え上手に乗り越えていきましょう。
更年期は卵巣機能の衰えと共にやってくるため閉経を挟んだ前後、約10年間を指します。初潮の年齢に個人差があるように閉経の年齢にも個人差があり、現在、日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後とされています。このため一般的には45歳~55歳頃を更年期と言われるようになっています。その人の卵巣の状態にもより早い遅いはありますが、避けて通るわけにはいきません。更年期に「身体」や「こころ」がどう変化するのか正しい知識を持っておくことが大切です。
当院では、ホルモン治療以外の、薬物療法や漢方療法・プラセンタ療法・心療内科療法等や、予防的な意味合いの食事療法・運動療法などを用いた複合的な治療を行っています。